『田園の詩』NO.117「賑やかな初盆会」 (2000.8.22)


 ただ今、お盆の真っ最中。当地では、8月13日の朝(又は夕方)墓参りして≪ご先祖
さま≫を迎えて、15日の夕方送って行きます。 七日盆の風習もあり、大体この頃から、
お盆の準備が始まります。

 地方により7月に行うのに対して、『月遅れの盆』ともいわれますが、全国的な帰省
ラッシュもこの時期なので、お盆といえば私達にとっては、やはり8月の行事なのです。

 さて、この≪ご先祖さま≫が各家庭に帰っている間に、お坊さんにお経をあげてもらい
たいという要望が多いので、小さな山寺の住職兼筆職人の私も、この期間中だけは坊さ
ん業に専任することになります。

 ところで忙しいのはお坊さんだけではありません。よく、「盆と正月が一緒に来たよう」
といわれますが、田舎では正月よりもお盆の方が何かと忙しく、又賑やかでもあります。
 
 特に、昨年のお盆以降に亡くなられた方のおられる家は『初盆会』で大変です。10日
頃から、親戚や知人、近所の人達がお悔みに訪れます。お盆の期間中常時在宅してお礼
の挨拶をしなければなりません。

 又、仏間(座敷)の≪お飾り≫も賑やかにします。女房は「大分は特に派手だ」と最初の
頃は仰天していました。天井から畳に届くような≪やぐら灯籠≫や≪提灯≫。電球で花が
光る蓮華の造花。賑やかに飾られたカゴ入りの食品の詰め合わせ。お酒やビールの
ケース、等々。それらがお供えした人の名札付きで所狭しと並べられます。


      
     ちょっと派手ですが、当地の初盆会の飾りつけは、大体このようになります。
     県内でも地域によって「派手さ」は随分ちがいます。近年簡略化はされてきま
     したが・・・。    (08年、あるお宅の初盆会の様子)



 灯籠や提灯はお盆が終わったら処分の仕様がないのか、結局寺に持ってきます。それ
らは家紋入りなので他家では使用不可。又、予め用意して置く物でもないので、実は
当方としても処分に困っているのが現状です。

 あるお宅にお参りしたら、扇風機にお供えした人の名札が付いていました。これなら、
猛暑の中をお参りした人に涼しさを与え、毎年使うこともできます。変わった≪お供え
品≫ですが、これには感心しました。

 賑やかな初盆会は、故人を偲ぶ寂しい気持ちの裏返しに他ありません。
                           (住職・筆工)

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